網膜剥離とは
網膜は光を電気信号に変えて脳に送り出す機関です。
カメラでいうとフィルムの役割をしていてモノを見る上でとても重要な役割をしています。
網膜は10層からなり、硝子体側の9層(感覚網膜,神経網膜)と最外層の色素上皮層との2つに大別できますが、この網膜の感覚網膜と色素上皮層との間に隙間が生じて、はがれてしまった状態が網膜剥離です。
網膜はその活動のエネルギーをすぐ裏の脈絡膜から吸収しています。そしてこの脈絡膜から栄養や酸素を受け取っているところが網膜色素上皮細胞です。網膜剥離では光を感知する感覚網膜とこの網膜色素上皮が離れてしまうため、網膜はすぐに栄養不足に陥り機能しなくなります。
その結果、視力障害をおこし場合によっては失明に至ります。視力低下のほかにも、光視症や飛蚊症が出現、剥離の程度や範囲によって不規則な視野欠損などを症状として自覚します。黄斑部に剥離が及ぶと急激に視力低下をきたします。
網膜剥離の原因
なぜ網膜剥離になるでしょうか。代表的な原因ついて紹介します。
老化
眼球内部の内部には硝子体という無色透明のゲル状の組織があります。成分はコラーゲン線維と水分などでできていますが、加齢とともに硝子体内部でゲル状の部分と水分が分離していきます。
これは後部硝子体分離という症状ですが、硝子体と網膜の接着が強いとゲル状の部分が分離していくときに網膜を引っ張って網膜剥離を引き起こします。
遺伝
遺伝によってもともと網膜に変性や萎縮があり網膜が薄くなっている人います。そういう方は網膜剥離になりやすい傾向にあります。
家族に網膜剥離の患者がいる場合は気をつける必要があります。目に異常がなくても数年に一回は目の検査を受けにいくことをお勧めします。
近視が強い
強度の近視の方は眼軸(角膜から網膜の中心窩の部分までの距離)が長い傾向にあり、その分網膜が引っ張られ薄くなっている場合があります。
通常成人のの眼軸は22〜23mm程度といわれていますが、変性近視と呼ばれる高度の近視の方は30mm程度になる場合があります。
そのため強度の近視の方は網膜剥離になりやすいといわれています。
目をぶつけたなど目に強い衝撃を受けたことがある場合
目に衝撃を受けると硝子体が動き網膜と硝子体の接着部分が動き網膜剥離になることがあります。
また衝撃で網膜に裂け目ができることがあります。その裂け目に硝子体の水分が入って網膜剥離になることがあります。衝撃を受けてから網膜剥離になるまで時間がかかる場合がありますので目に衝撃を受けた場合、念のため検査を怠らないようにしましょう。
網膜剥離の種類
網膜剥離は大きく裂孔原性網膜剥離と非裂孔原性網膜剥離に分かれます。非裂孔原性網膜剥離には外部からの衝撃によって発生する網膜剥離と他の病気が原因となって起きる続発性網膜剥離があります。
裂孔原性網膜剥離
網膜剥離の9割がこの裂孔原性網膜剥離だといわれています。裂孔原性網膜剥離とはまず最初に網膜に孔(網膜裂孔)が生じ、そこが広がる形で網膜がはがれるタイプの網膜剥離です。
網膜裂孔ができるとそこに硝子体の水分が入り込みその圧力で網膜が剥がれます。網膜裂孔の原因として老化による後部硝子体分離や物理的衝撃などがあります。
非裂孔性網膜剥離
非裂孔性網膜剥離とは網膜裂孔以外の原因で網膜剥離になることです。滲出性網膜剥離と牽引性網膜剥離に分類されます。
滲出性網膜剥離は血液中の水分(滲出液)が感覚網膜と色素上皮間に液体が貯留する結果生じるものでぶどう膜炎や眼内腫瘍の時に起こります。
また牽引性網膜剥離とは新生血管が発生時に増殖膜という膜を網膜上に作りますが、この増殖膜が収集するときに網膜を引っ張ることで網膜剥離を引き起こします。
網膜剥離の症状
網膜剥離の症状として以下のようなものがあります。
気になる症状があったら一度、眼科にいって検査を受けることをお勧めします。
飛蚊症
飛蚊症とは視界にゴミのようなものが見える症状のことです。飛蚊症の多くは治療の必要のないものですが、網膜剥離が原因となるものもあります。網膜に孔が開いたり出血したりするとそれがゴミのように移る場合がありますで、急に飛蚊症が現れたという場合は注意が必要です。
光視症
光視症とはまぶたを閉じていても光が見える症状です。硝子体が萎縮するときに、網膜と硝子体に強い癒着があると網膜が引っ張られ、網膜上の視細胞が刺激されるために生じます。
視力低下と視野欠損
網膜剥離が進行して後半部の中心窩にまで達すると視力が著しく低下します。通常は網膜の上部や下部から進行していくため気づかずに中心窩に達してようやく網膜剥離に気づくケースもあります。
また視界の一部が黒く見えなくなることがあります。網膜がはがれるとはがれた部分の網膜が機能しなくなり、その部分が担っていた視野がかけてしまうのです。
網膜剥離は症状が進めば進むほど治療が難しくなりますので少しでも目に異常を感じたら検査をして早期治療ができるようにしたいものです。
網膜剥離の治療法
網膜剥離の治療法としてレーザー治療、強膜バックリング、硝子体手術があります。
レーザー治療
レーザー凝固といて網膜裂孔が生じたところにレーザーを照射して孔を網膜に焼き付ける治療法です。これによって孔に硝子体の水分が入り込み網膜をはがされることがなくなります。比較的早期の段階で行われる治療です。
強膜バックリング
胸膜バックリングとは網膜裂孔が生じている部分をシリコンを外部から押し付けてその圧力ではがれた網膜をくっつける方法です。
シリコンの圧力で網膜裂孔と眼球壁の距離を近づけた状態で冷凍凝固や光凝固を行うことで網膜をくっつけます。シリコンを輪状に巻き付けて圧力を加える輪状締結という方法もあります。合併症として眼球にゆがみが出るため近視や乱視が進んだり複視になったりすることがあります。
硝子体手術
後部硝子体剥離が生じると硝子体が網膜を引っ張りますが、硝子体手術ではその網膜を引っ張っている硝子体を取り除き代わりに特殊なガスを注入し、その浮力ではがれた網膜をもとに戻します。
ガスは軽く上方に移動する性質がありますので網膜がくっつくまで網膜が上になるようにうつむいた姿勢をとる必要があります。
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